産卵状況の概要


   
※1999、2000年のMポイントの産卵数は推定数です。
2023(令和5)年の発生・産卵状況
・・・産卵数激減、危機的状況におちいる

 今年の冬は山間部では雪が降りましたが降雪量は少なかったようです。平野部でも数回雪が降りましたが暖冬傾向でした。この傾向は続き、3月の月の平均気温は晴の日が多かったため、+4.3℃とかなり高くなりました。前橋の桜の開花日は320日、満開は324日でした。4月に入っても気温の高い日は続き、天気は周期的に変わりましたが、5月も平年並みから高い状況でした。
 429日(土)始動式では、元キャンプ場上のヤマザクラは咲き終わり、葉桜になっていました。カラマツ林は既に葉がでており、標高1000mより上の雑木林も芽吹き始めていました。ウスバサイシンは1000m付近まで芽が出ていましたが、非常に減っており、小さい株ばかりしか残っていませんでした。植物はウスバサイシンに限らず、カジカエデやウリハダカエデなどシカが食べない植物以外は殆ど見かけませんでした。林床は下草刈りを行った後のようで、シカによる食害が非常に進んでいると見受けられました。

〔Kポイント〕
 観察カードの集計が終了していないので成虫の延べ頭数は把握できていませんが、成虫の初見日は420日とかなり早かったです。しかし、その後成虫は殆ど確認できませんでした。54日(木)の観察会では晴れているのにヒメギフチョウを観察することができず、初めての経験となりました。心配は現実的になり、産卵期に入り調査を行いましたが、確認された卵塊は、3卵塊29卵と絶望的な数になってしまいました。そのため、前述ように発見された卵塊全てを回収しました。生息地での食草が著しく減っています。

〔Mポイント〕
 成虫初見日は53日、産卵初見日も53日でした。成虫は確認されたものの、産卵は激減し、確認された産卵数は7卵塊63卵(昨年30卵塊284卵)でした。そのため、このポイントも発見された卵塊全てを回収しました。卵塊の多くはカジカエデなどシカが食べない植物の足下の比較的大きな株で確認されました。

Yポイント〕
 このポイントは情報不足と観察者があまり行かないので、成虫の初見日は不明です。また産卵調査も行いましたが、産卵は確認されませんでした。

〔目白キャンプ場水場付近〕
 2022年、産卵が多く見られた場所でしたが、成虫の確認はされず、産卵もありませんでした。

[今後]
 回収された段階で既に捕食されていたりして、わずか50頭程しか残っていません。緊急に抜本的な対応を実施しないと、来年以降のヒメギフチョウを見ることは絶望的な状況です。激減の理由は、シカによる食草の食害と考えられます。植生のコドラート調査を行っていますが、シカ柵と外では明らかに変化が見られます。今後、シカ柵の増加やウスバサイシンの増殖など、「ヒメギフチョウ保護連絡協議会」などと協力し合い行っていく予定です。
 先ずは、絶滅を回避するために、どの様に個体数を増やすことができるか早急な検討が必要です。会の活動を始めて37年目になります。毎年、シーズンになると生息地に入り、成虫を確認し、毎週産卵数と幼虫の数を数え、網掛け保護やウスバサイシンの移植作業など、沢山の方が関わり協力して保全活動を行ってきました。長年の努力を無にしないためにも早急な検討を行います。
 絶滅させないため危機的状況を多くの方にしっかり知って頂かなくてはなりません。来シーズンまで1年ありません。皆様のお知恵や対策など、具体的にお知らせ願いたいと存じます。

〈成育状況表〉

 

Yポイント

Mポイント

Kポイント

成虫初見日

不明

53

420

成虫ピーク

 

未集計

未集計

産卵初見日

なし

53

55

産卵ピーク

 

不明

不明

令幼虫

 

 

 

2令幼虫

 

 

 

令幼虫

 

 

 

卵塊数産卵数

0卵塊

7卵塊(63卵)

3卵塊(29卵)

 
2022(令和4)年の発生・産卵状況・・・持ち直し傾向も、シカ害など厳しい状況は続く

 今年の冬は雪が何回か降り低温傾向でした。3月以降の気温は平年並みから暖冬傾向となり、前橋の桜の開花日は327日でした。4月下旬の気温が高かったので、成虫の発生も早いのではと思われましたが、ヒメギフチョウの発生時期は例年並みでした。キャンプ場から上のカラマツ林は既に葉がでており、1000mから下のウスバサイシンは芽が出ていました。しかし、標高1000mより上では臨床での芽吹きはまだのようで、1000mを境に季節の進行が大幅に違っていたようでした。今年もウスバサイシンはシカの食害にあいました。
 観察カードの集計が終了していないので成虫の延べ頭数は把握できていませんが、成虫の初見日は430日で、昨年と同じでした。成虫は発生しましたが、山頂付近は産卵には適さない程の北風が強く日が多かったようです。それでも517日現在1,853卵と1,500卵を越えたため、「保護管理計画」に沿って緊急措置は行われませんでした。その後38卵塊が見付かり産卵総数は215卵塊2,196卵となり、昨年より555卵ほど増加しました。この増加の多くは2021年の卵より飼育した蛹を、目白キャンプ場水場付近とKポイントの中腹に約50蛹ずつ放虫した昨年度の緊急措置の成果が見られたものと思われます。
 野外で産卵された卵塊には、ほぼ全てに網掛け保護を行いました。早い物は528日頃から令幼虫、65日頃から令~令幼虫になり始めました。今年も食草不足を補うために、群馬県及び渋川市教育委員会から許可を頂き、ウスバサイシンを幼虫の自然分散が始まる前に卵塊の近くに移植しました。528日に、500株程度を目白キャンプ場水場付近の圃場から、612日に、赤城歴史資料館から60株程を卵塊の近くに移植しました。619日頃令~令となり自然分散が始まりましたので、すべての網かけと荷札を外し、今年の調査は終了しました。移植した食草に移動している幼虫も多く、分散時のリスクは少し回避できたかと思われます。

*成育状況は表を参照。

〔Kポイント〕
 成虫の初見日は430日、ピークはゴールデンウィーク中と思われます。しかし成虫の数は少なく産卵が心配されましたが、産卵初見日は56日で昨年度同様でした。産卵数は185卵塊1,898卵(昨年142卵塊1,335卵)で、昨年よりも増加しました。産卵地域は山全体に分散していたようでしたが、尾根筋や中腹に産卵が集中しました。また、目白キャンプ場での産卵が増加しました。この付近の産卵は蛹で放虫した個体によるものが含まれると思われます。産卵期は曇りの日や強風の日が多かったため、産卵数が伸び悩むと推測していましたが、思ったよりも確認され増加傾向となりました。しかし、シカによる食害などによるウスバサイシンや蜜源となるスミレの減少は早急な対策が必要と思われます。
 ほぼ全卵塊に網掛け保護を行い、若齢期の死亡率の低下を防ぎましたが、葉の表に産卵した物、無性卵の卵塊や産卵期でのダニやアリなどによる捕食を防ぎきれませんでした。また今年も盗難と思われる卵塊もありました。網掛け保護の卵塊も持ち去られるなど、ここ数年は悪質化が進んでいます。卵は520日を過ぎても孵化する卵塊がなかったため、多くが無精卵かと心配されましたが、65日に殆どの卵塊が①令幼虫になりました。また528日と612日にウスバサイシンの移植作業も行いました。6月に入り天気が悪い日が多く、また2週目は4月下旬の気候になり低温による死亡が心配されましたが、619日には令~令幼虫になり自然分散が始まったので、全ての卵塊の網掛けと荷札を外し、今年の観察は終了しました。  

〔Mポイント〕
成虫初見日は430日、産卵初見日は56日でした。成虫は確認されたものの、産卵は少なく、確認された産卵数は30卵塊284卵(昨年30卵塊278卵)と昨年とほぼ同じでした。
 産卵ポイントは山頂付近ではあまり確認できず、中腹の尾根沿いに集中しており、昨年と同じような傾向でした。これは、シカの食害によるウスバサイシンの減少と考えられます。ほぼ全ての卵塊に網掛け保護を行い、このポイントも528日と612日にウスバサイシンの移植作業を行いました。619日には令~令幼虫になり自然分散が始まっていたので、全ての卵塊の網掛けと荷札を外しました。ここでも盗難と思われる卵塊がいくつかありました。

Yポイント〕
このポイントは情報不足と観察者があまり行かないので、成虫の初見日は不明です。また産卵調査も行いましたが、産卵は確認されませんでした。

全体としては昨年緊急措置を行った効果は見られました。Kポイントでの産卵は増加傾向、特に目白キャンプ場周辺が急増しましたが、Mポイントの産卵は横ばいでした。これは、緊急措置を行った蛹をKポイントに戻し、Mポイントに戻さなかったためかと推察されます。成虫はあまり移動しない様です。網掛け保護、食草の移植、慢性化しているウスバサイシン不足などに色々対策を練ってはいますが、なかなか効果が現れない現状です。シカによる食草の食害に対しては生息地に渋川市によるシカ柵を設けてもらっていますが、その効果はまだ分かっていない状況です。今年は緊急措置(域外飼育)を行っていません。例年にない早い梅雨明け、猛暑など今後の天気などがどのようにヒメギフチョウに影響を及ぼすか懸念されます。引き続き注意観察と保護対策が必要です。

〈成育状況表〉

 

Yポイント

Mポイント

Kポイント

成虫初見日

不明

430

430

成虫ピーク

 

未集計

未集計

産卵初見日

なし

58

56

産卵ピーク

 

517日前後

515日前後

令幼虫

 

65日前後

65日前後

2令幼虫

 

612日前後

612日前後

令幼虫

 

619日前後

619日前後

卵塊数産卵数

0卵塊

30卵塊(284卵)

185卵塊(1,912卵)

 
2021(令和3)年の発生・産卵状況・・・やや持ち直すも、厳しい状況は続く! 

引き続き今年もコロナ禍であり、5月中旬には「まん延防止等重点措置」が適用されたため、基本的にヒメギフチョウの観察は個々に行いました。
 今年も暖冬傾向で前橋の桜の開花日は321日でした。そのため成虫の発生も早いと思われましたが、3月は平年よりも気温が高かったものの、4月下旬は気温の低い日が多く、ヒメギフチョウの発生時期は例年並みでした。標高1000mの上下で季節の進行が大幅に違っていたようです。食草やスミレなどの植物は芽が出ましたが、シカに食べられたためか、スギ林の下草はあまり伸びませんでした。 観察カードの集計が終了していないので成虫の延べ頭数は把握できていませんが、成虫の初見日は430日で、昨年よりも早かったです。成虫は発生しましたが、ゴールデンウイーク以降、曇天や雨の日が続き、思うように産卵は伸びませんでした。確認された産卵数は昨年よりも増えたものの、523日現在1,474卵と1,500卵に若干満たなかったので、「保護管理計画」に沿って、今年も群馬県及び渋川市教育委員会による緊急措置が行われました。その後7卵塊が見付かり産卵総数は175卵塊1,641卵、昨年の1.7倍程になりました。昨年度の緊急措置の成果が見られたものと思われます。 野外で産卵された卵塊には、ほぼ全てに網掛け保護を行いました。早い物は523日頃から令幼虫、66日頃から令~令幼虫になり始めました。赤城歴史資料館で育てたウスバサイシンの苗は既に目白キャンプ場水場付近の圃場へ移植し育てています。今年も食草不足を補うために、群馬県及び渋川市教育委員会から許可を頂き、ウスバサイシンを幼虫の自然分散が始まる前に、卵塊の近くに移植しました。620日頃令~令、早いものでは④令幼虫となり自然分散が始まりましたので、すべての網かけと荷札を外し、今年の調査は終了しました。移植した食草に移動している卵塊も多く、分散時のリスクは少し回避できたかと思われます。*成育状況は表を参照。

〔Kポイント〕  
 成虫の初見日は
52日、ピークは58日前後と思われます。5月中旬以降は天気が悪く、確認された成虫は殆どありませんでした。産卵初見日は56日でした。産卵数は142卵塊1,335卵(昨年62卵塊540卵)で、昨年よりも増加しました。産卵地域は山全体に分散していたようでしたが、尾根筋や中腹に産卵が集中しました。また、目白キャンプ場への降り口への尾根筋や、水場付近でも産卵が見られました。水場付近の産卵は蛹で放虫した個体によるものが含まれると思われます。産卵期は曇りの日や強風の日が多かったため、産卵数が伸び悩むと推測していましたが、思ったよりも確認され増加傾向となりました。しかし、生息地には許容量があり、幼虫と食草とのバランス、シカによる食害などによるウスバサイシンの減少は、今後も課題です。緊急措置が行われなかった137卵塊1,278卵塊のほぼ全卵塊に網掛け保護を行い、若齢期の死亡率の低下を防ぎましたが、葉の表に産卵した物、無性卵の卵塊や産卵期でのダニやアリなどによる捕食を防ぎきれず、野外での成育も悪い状況でした。また今年も盗難と思われる卵塊もありました。網掛け保護の卵塊も持ち去られるなど、ここ数年は悪質化が進んでいます。5月下旬からは天気も安定したため、幼虫の成育は早く、66日にはウスバサイシンの移植作業を行いました。620日には令~令幼虫になり自然分散が始まったので全ての卵塊の網掛けと荷札を外し、今年の観察は終了しました。  
〔Mポイント〕
 成虫初見日は430日、産卵初見日は59日でした。成虫は確認されたものの産卵は少なく、確認された産卵数は30卵塊278卵(昨年54卵塊444卵)と昨年よりも減少しました。 産卵ポイントは山頂付近ではあまり確認できず、中腹の尾根沿いに集中しており、昨年とは逆の傾向になりました。また、山頂付近はウスバサイシンが非常に減少したように感じられました。これは、気候変動による植生の変化なのか、シカによる食害なのかは、残念ながら現時点ではわかりません。今年もアリによる捕食が目立ちました。緊急措置が行われなかった28卵塊246卵塊に網掛け保護を行い、このポイントも66日にはウスバサイシンの移植作業を行いました。620日には令~令幼虫になり自然分散が始まっていたので全ての卵塊の網掛けと荷札を外しました。ここでも盗難と思われる卵塊がいくつかありました。 
Yポイント〕
 このポイントは情報不足と観察者があまり行かないので、成虫の初見日は不明です。産卵は56日に発見されましたが、成虫は確認できませんでした。産卵は3卵塊28卵のみで、その内1卵塊11卵を緊急措置による保護を行いました。残り2卵塊は、来年の成虫発生を考え、Mポイントへ移動しました。  

 全体としては昨年緊急措置を行った効果は見られました。しかし、Kポイントでの産卵は増加しましたが、Mポイントの産卵は減少しました。これは、緊急措置を行った蛹をKポイントに戻し、Mポイントに戻さなかったためかと推察されます。成虫はあまり移動しないのかもしれません。緊急措置、網掛け保護、食草の移植、慢性化しているウスバサイシン不足などに色々対策を練ってはいますが、なかなか効果が現れない現状です。また乾燥化による植生の変化やシカによる食草の食害など影響は色々考えられます。来年、成虫がどの程度発生するか懸念されます。メインアイランドの移動やアイランドの増加、生息地の環境整備など引き続き注意観察と保護対策が必要です。

〈成育状況表〉

 

Yポイント

Mポイント

Kポイント

成虫初見日

不明

430

52

成虫ピーク

 

未集計

未集計

産卵初見日

56

59

56

産卵ピーク

 

516日前後

515日前後

令幼虫

 

66日前後

530日前後

2令幼虫

 

612日前後

612日前後

令幼虫

 

620日前後

620日前後

卵塊数産卵数

3卵塊(28卵)

30卵塊(278卵)

142卵塊(1,335卵)

  観察カードは未集計です。成虫延べ頭数など整いましたらご報告いたします。特に成虫数と初見日が把握出来ておりません。今後の考察の為にも観察カードの提出にご協力をお願いいたします。 

 
2020(令和2)年の発生・産卵状況・・・やや持ち直すも、危機的状況が続く! 

 今年も暖冬傾向で成虫の発生も早いと思われました。しかし、前橋では3月下旬に霙を観測し、4月に入ってからも寒暖の差が大きく、425日には生息地で積雪を確認しました。そのため成虫の発生は遅く、食草やスミレなどの植物も2週間ほど成育が遅れました。
 今年はCOVID-19による異常事態宣言が発動されていたため、ヒメギフチョウの観察は個々に行いました。観察カードの集計が終了していないので成虫の延べ頭数は把握できていませんが、成虫の初見日は53日で昨年と同じでした。しかし、成虫の発生率は悪く、確認された産卵数は昨年よりも増えたものの517日現在748卵と少なかったので、群馬県及び渋川市教育委員会による緊急措置が行われました。その後27卵塊が見付かり産卵総数は117卵塊991卵、昨年より350卵ほど増えました。昨年度の緊急措置の成果が見られたものと思われますが、引き続き絶滅の危機が心配されます。野外で産卵された卵塊には全て網掛け保護を行いました。早い物は529日頃から令幼虫、67日頃令~令幼虫になり始めました。今年も食草不足を補うために、群馬県及び渋川市教育委員会から許可を頂き、赤城町資料館で育てているウスバサイシンを自然分散が始まる前に、卵塊の近くに移植しました。615日頃令~令幼虫となり自然分散が始まりましたので、すべての網かけと荷札を外し、今年の調査は終了しました。移植した食草に移動している卵塊も多く、分散時のリスクは少し回避できたかと思われます。*成育状況は表を参照。  

〔Kポイント〕
 成虫の初見日は53日、ピークは57日前後と思われます。確認された成虫は少なく、産卵初見日は511日でした。産卵数は62卵塊540卵(昨年24卵塊208卵)でした。産卵地域は山全体に分散していたようでしたが、産卵期は強風の日が多く、産卵しづらかったのか卵塊が小さいように感じられました。また山の斜面よりも尾根筋と中腹に産卵が見られました。
  緊急措置が行われなかった34卵塊307卵塊に網掛け保護を行い、若齢期の死亡率の低下を防ぎましたが、無性卵の卵塊や産卵期でのダニやアリなどによる捕食を防ぎきれず、野外での成育も悪い状況でした。また今年は盗難と思われる卵塊もありました。5月、6月と気温の高い日が続いたため幼虫の成育は早く、6月7日にはウスバサイシンの移植作業を行いました。615日には令~令幼虫になり自然分散が始まったので、全ての卵塊の網掛けと荷札を外し今年の観察は終了しました。

〔Mポイント〕
 成虫初見日は58日、産卵初見日は511日でした。Kポイントと同様に成虫、産卵共に少なく、確認された産卵数は54卵塊444卵(昨年41卵塊385卵)でした。産卵ポイントは山頂付近集中し、中腹の尾根沿いにはあまり産卵されていませんでした。今年もアリによる捕食が目立ちました。このポイントも緊急措置が行われなかった40卵塊321卵塊に網掛け保護を行い、このポイントも6月7日にはウスバサイシンの移植作業を行いました。615日には令幼虫になり自然分散が始まっていたので全ての卵塊の網掛けと荷札を外しました。ここでも盗難と思われる卵塊がありました。

Yポイント〕
このポイントは情報不足と観察者があまり行かないので、成虫の初見日は不明です。産卵は5月17日に発見されましたが、成虫は確認できませんでした。産卵は1卵塊7卵のみでしたので、緊急措置による保護を行いました。

 
 緊急措置を行った効果は見られましたが、昨年秋の台風の影響など異常気象などの気候変動がどのように影響しているのか、その要因は確実にはわかっていません。緊急措置、網掛け保護、食草の移植、慢性化しているウスバサイシン不足などに色々対策を練ってはいますがなかなか効果が現れない現状です。また乾燥化による植生の変化やシカによる食草の食害など影響は色々考えられます。来年、成虫がどの程度発生するか懸念されます。メインアイランドの移動やアイランドの増加、生息地の環境整備など引き続き注意観察と保護対策が必要です。

〈成育状況表〉

 

Yポイント

Mポイント

Kポイント

成虫初見日

不明

58

53

成虫ピーク

 

未集計

未集計

産卵初見日

517

511

513

産卵ピーク

 

517日前後

517日前後

令幼虫

 

64日前後

64日前後

2令幼虫

 

67日前後

67日前後

令幼虫

 

615日前後

615日前後

卵塊数産卵数

1卵塊(7卵)

54卵塊(444卵)

62卵塊(540卵)

  観察カードは未集計です。成虫延べ頭数など整いましたらご報告いたします。特に成虫数と初見日が把握出来ておりません。今後の考察の為にも観察カードの提出にご協力をお願いいたします。

 2019(令和元)年の発生・産卵状況・・・過去最低の産卵数、絶滅の危機!

 今年も暖冬と言われ、3月は晴の日が多く平年よりも暖かかったので、成虫の発生も早いと思われました。しかし、4月上旬は寒い日が続き、その後も思った様に気温も上がらず、427日には山間部で降雪がありました。気温差が激しかったため、成虫の発生は遅く、食草やスミレなどの植物も2週間ほど生育が遅れました。 観察カードの集まりが悪く成虫の延べ頭数は把握できていませんが、成虫の初見日は53日でした。しかし、成虫の発生率は悪く、確認された産卵数も520日現在430卵と非常に少なかったので、群馬県及び渋川市教育委員会による緊急措置が行われました。その後23卵塊が見つかりましたが、産卵総数は69卵塊612卵、昨年より激減しました。絶滅の危機が心配されます。野外で産卵された物には全て網掛け保護を行いました。61日頃から①令幼虫、610日頃①令~②令幼虫、620日頃②令~③令幼虫となり自然分散が始まりました。623日にはすべての網掛けと荷札を外し、今年の調査は終わりました。      ※生育状況は表を参照。

[Kポイント]
成虫の初見日は53日、ピークは512日前後と思われます。確認された成虫は少なく、産卵初見日は512日でした。産卵数は24卵塊208卵と過去最低でした。産卵地域は山全体に分散していたようでしたが、産卵したメスは数頭だと思われます。緊急措置が行われなかった9卵塊79卵に網掛け保護を行い、若齢期の死亡率の低下を防ぎましたが、無精卵の卵塊や産卵期でのダニやアリなどによる捕食を防ぎきれず、野外での生育も悪い状況でした。623日、たった一つ残った卵塊が③令幼虫になったので、全ての卵塊の網掛けと荷札を外し、今年の観察は終了しました。

[Mポイント]
成虫初見日は53日、産卵初見日は512日でした。Kポイントと同様に成虫、産卵共に少なく、確認された産卵数は41卵塊385卵でした。産卵ポイントは山頂付近と尾根沿いに集中しており、今年もアリによる捕食が目立ちました。このポイントも緊急措置が行われなかった10卵塊84卵に網掛け保護を行いました。613日には③令幼虫になり自然分散が始まっていたので全ての卵塊の網掛けと荷札を外しました。この段階で確認された幼虫は3卵塊9頭のみでした。

[Yポイント]
このポイントは情報不足と観察者があまり行かないので、成虫の初見日は不明です。産卵は530日に発見されましたが、成虫は確認できませんでした。産卵は4卵塊19卵でした。産卵ポイントは伐採地側及び林の奥西側の斜面で見つかりました。このポイントも網掛け保護を行い、613日に②令から③幼虫になったので、網掛けと荷札を外し、このポイントの観察は終了しました。

前述しましたが、3ポイントの産卵総数は69卵塊612卵で、過去最低であった2007年の752卵を下回りました。その原因は分かりませんが、昨年は梅雨が早く開け猛暑であったこと、暖冬であったにもかかわらず、4月に入ってからの寒暖の差が激しかったことなどが考えられます。また、乾燥化による植生の変化など影響は色々考えられますが、その要因は確実には分かっていません。緊急措置、網掛け保護、食草の移植、慢性化しているウスバサイシン不足など色々対策を練ってはいますが、なかなか効果が現れない現状です。来年、成虫がどの程度発生するか懸念され、ますます危機的な状況です。メインアイランドの移動やアイランドの増加、生息地の環境整備など引き続き注意観察と保護対策が必要です。

2019年生育状況表>

 

Yポイント

Mポイント

Kポイント

成虫初見日

不明

53

53

成虫ピーク

------

未集計

未集計

産卵初見日

530

512

512

産卵ピーク

------

518日前後

518日前後

1令幼虫

------

61日前後

61日前後

2令幼虫

------

69日前後

613日前後

3令幼虫

------

613日前後

623日前後

卵塊数(産卵数)

4卵塊(19卵)

41卵塊(385卵)

24卵塊(208卵)

 

  2018年の発生・産卵状況(速報)・・・産卵数は増加するも危機的状況は続く

この冬は寒いと言われていましたが、3月中旬以降から急激に気温が上がり、平均気温の高い状況は、3月、4月、5月と連続しました。そのため成虫の発生は例年より2週間程早く、その後も気温が下がらず雨天も少なかったので、産卵、幼虫の成育も順調でした。スミレなどの蜜源も比較的に同じ時期に発生し、心配されたウスバサイシンの芽吹きもほぼ産卵時期でした。産卵場所は、広がった様に思われますが、各場所での集中が多く、今年も食草不足が心配されました。
 観察カードの集まりが悪く成虫の延べ頭数は把握できていませんが、成虫は4月下旬~ゴールデンウイークに多く観察され、産卵は510日~20日前後に集中していました。5月中旬で産卵数が2000卵程に達したので、今年は群馬県及び渋川市教育委員会による緊急措置は回避されました。527日頃から➀令幼虫、63日頃➀令~➁令幼虫、69日頃➁令~③令幼虫となり自然分散が始まりました。早い物は④令幼虫になっており、69日にはすべての網かけと荷札を外し、今年の調査は終了しました。*成育状況は表を参照。

〔Kポイント〕
 成虫の発生は早く、初見日は419日、ピークは4月下旬からゴールデンウイーク中と思われます。期待されたほど成虫は増えませんでしたが、産卵初見日は52日から始まりました。産卵数は224卵塊2062卵、2017年の補強措置により産卵数は増加しました。(昨年105卵塊917卵)。産卵地域は比較的山全体に分散して産んでいたようでしたが、各ポイント共産卵が集中していたため、今年も食草のウスバサイシン不足が続きました。網掛け保護はほぼ全部に行い、若齢期の死亡率の低下を防ぎました。天候に恵まれ幼虫の成育は比較的順調でしたが、やはり産卵期でのダニやアリなどによる捕食は防ぎきれない状況です。527日前後に➀令幼虫、63日前後に➁令幼虫になり始め、食草不足の卵塊は移動措置をとりましたが、分散が激しく、69日には不明の卵塊が増えました。③令になっている卵塊が多く見られたため、全ての卵塊の網掛けと荷札を外し、食草不足の卵塊は幼虫を移動して、このポイントの観察は終了しました。

〔Mポイント〕
 成虫初見日は421日で1週間~10日程成虫の発生が早かったです。ウスバサイシンの芽吹きも小さいながら例年よりも早く、産卵も54日から確認されました。昨年より2週間も早い記録です。産卵数は93卵塊797卵(昨年36卵塊373卵)と少しですが増加しました。産卵ポイントは山頂付近と尾根沿いに集中しており、今年もアリによる捕食が目立ちました。このポイントも卵塊に網掛け保護を行いました。527日前後に➀令幼虫、63日前後に➁令幼虫になり始め、早い物は自然分散が始まっていました。69日には分散が進んだため、不明にり、卵塊が混ざってしまったような状態でした。Mポイントは例年Kポイントよりも成育が遅いのですが、今年はこちらの方が若干早かったように感じました。③令になっているものも多く、全ての卵塊の網掛けと荷札を外し、このポイントの観察は終了しました。

Yポイント〕
 このポイントは情報不足と観察者があまり行かないので、成虫の初見日は不明です。産卵は55日に発見されましたが、成虫は確認できませんでした。産卵は11卵塊102卵(昨年9卵塊81卵)とほぼ同じでした。産卵ポイントは伐採地側と林の入口付近のみでした。このポイントも網掛け保護を行いました。産卵が増えないのは、木が大きくなり林の臨床に陽が当たらなくなったため、ウスバサイシンが減少しているのが原因の一つ方かと思われます。

 3ポイントの産卵合計は328卵塊2961卵でした。2017年の緊急措置を行ったため、今年の産卵数は増加しましたが、2014年には5,500卵程確認されていたことを考えると、引き続き危機的な状況であることには変わりありません。慢性化しているウスバサイシン不足、乾燥化による植生の変化など影響は色々考えられますが、その要因は確実にはわかっていません。緊急措置、網掛け保護、食草の移植など色々対策を練ってはいますが、なかなか効果が現れない現状です。来年、成虫がどの程度発生するか懸念されます。メインアイランドの移動やアイランドの増加、生息地の環境整備など引き続き注意観察と保護対策が必要です。  

〈成育状況表〉

 

Yポイント

Mポイント

Kポイント

成虫初見日

不明

421

419

成虫ピーク

 

未集計

未集計

産卵初見日

55

54

52

産卵ピーク

 

513日前後

512日前後

令幼虫

 

527日前後

527日前後

2令幼虫

 

63日前後

63日前後

令幼虫

 

69日前後

69日前後

卵塊数(産卵数)

11卵塊(102卵)

93卵塊(797卵)

224卵塊(2062卵)


 2017年の発生・産卵状況(速報)成虫数・産卵数ともに激減、緊急措置実施
この冬も暖冬傾向と言われていましたが、3月になっても寒い日が続きサクラの開花は4月上旬でした。4月に入ってからもなかなか暖かくはならず、429日・始動式の日には成虫を確認する事は出来ませんでした。キャンプ場周辺のサクラは咲き始め、また遊歩道下部のウスバサイシンは既に芽吹き始めていましたが、1000mより上部、山頂付近は木々を始め、草花の芽吹きは全く見られませんでした。4月に入ってからも冷え込んだ日があり、山頂付近から見る谷川連峰や武尊山はしっかり雪を被っていました。ここ、23年は暖冬の影響で2週間程季節が早かったのですが、今年は逆に2週間程遅れているようでした。成虫はゴールデンウイーク頃から確認され、産卵も2週間ほど遅れて開始されました。しかし、513日~19日の1週間はぐずついた天気が続き、産卵に悪影響が及ぶことが心配されました。その後、5月後半、6月と晴れの日が多く、気温も安定していたため、産卵、幼虫と順調に成育したようです。しかし、今年も成虫数、産卵数共に激減しました。昨年に引き続き、来年、成虫の発生が見られるか危機的な状況となり、これを受けて、群馬県及び渋川市教教育員会は緊急措置をとることにしました。産卵が激減した中で盗難がなかったことは何よりです。
 観察カードの集まりが悪く成虫の延べ頭数は把握できていませんが、成虫は5月上旬に多く観察され、産卵は520日~27日前後に集中していました。63日頃から1令幼虫、610日頃1令~2令幼虫、617日頃2令~3令幼虫となり自然分散が始まりました。624日にはすべての網かけと荷札を外し、今年の調査は終了しました。

*成育状況は表を参照。

〔Kポイント〕
 成虫初見日は53日、ピークはゴールデンウイーク終盤頃と思われます。期待されたほど成虫を確認することはできず、産卵も心配され、また山頂付近の食草の芽吹きが遅いこと、及び食草不足が懸念されました。産卵初見日は514日で例年よりも10日程遅かったです。5月の3週目は天気が優れなかったものの、食草の芽吹きも遅かったの為、5月下旬には産卵がかろうじて増えました。産卵数は105卵塊917卵と今年も少なかったです(昨年74卵塊702卵)。産卵地域は比較的山全体に分散して産んでいたようでした。網掛け保護はほぼ全部に行い、若齢期の死亡率の低下を防ぎました。その後5月下旬から6月と天候に恵まれ、幼虫の成育は比較的順調でした。自然分散が始まったので624日に全ての卵塊の網掛けと荷札を外し、食草不足の卵塊にはウスバサイシンを移植してこのポイントの観察は終了しました。
〔Mポイント〕
 成虫初見日は430日で例年並みでした。ウスバサイシン芽吹きが遅かったこともあり、産卵は516日から確認されました。産卵数は昨年117卵塊978卵であったものが、今年は36卵塊373卵に激減しました。産卵ポイントは山頂付近と尾根沿いに集中しており、今年もアリによる捕食が目立ちました。このポイントも全部の卵塊に網掛け保護を行いました。①令幼虫は610日前後、②令幼虫は618日前後、624日頃には③令幼虫となり、自然分散が始まったので全ての卵塊の網掛けと荷札を外し、このポイントの観察は終了しました。
Yポイント〕
 このポイントは情報不足と観察者があまり行かないので、成虫の初見日は不明です。産卵は521日に発見されましたが、成虫は確認できませんでした。産卵は9卵塊81卵(昨年17卵塊130卵)とこのポイントも減少しました。数は少ないものの、産卵ポイントは伐採地側、林の奥の方へと広がりを見せました。

3ポイントの産卵合計は150卵塊1,371卵でした。2014年には5,500卵程確認された卵は毎年減少しています。ウスバサイシンの減少や乾燥化による植生の変化など影響は色々考えられますが、その要因は確実にはわかっていません。1,000卵が絶滅のボーダーラインと言われています。まさに危機的な状況であることには変わりありません。緊急措置、網掛け保護、食草の移植など色々対策を練ってはいますが、なかなか効果が現れない現状です。来年、成虫がどの程度発生するか懸念されます。メインアイランドの移動やアイランドの増加、生息地の環境整備など引き続き注意観察と保護対策が必要です。 

〈成育状況表〉

 

Yポイント

Mポイント

Kポイント

成虫初見日

不明

430

53

成虫ピーク

 

未集計

未集計

産卵初見日

521

516

53

産卵ピーク

 

527日前後

527日前後

令幼虫

 

610日前後

63日~11日前後

2令幼虫

 

618日前後

618日前後

令幼虫

 

624日前後

624日前後

卵塊数(産卵数)

9卵塊(81卵)

36卵塊(373卵)

105卵塊(917卵)

 

2016年の発生・産卵状況(速報)・・・深刻な危機的状況。盗難の影響も大か・・・

 
この冬は群馬県北部の山間部では降雪が少なく、平野部も暖冬傾向でした。その影響は3月も続き、4月に入ってからも暖かい日が多く気温も上昇しました。そのため、420日には成虫を確認しました。429日・始動式の日は冷え込み、成虫は確認できなかったものの、Kポイント下部周辺のウスバサイシンは既に展葉していました。季節は例年より10日から2週間ほど早いようでした。5月、6月と晴れの日が多く、気温も安定していたため、成虫の発生、産卵、幼虫と順調に成育したようです。しかし、今年は成虫数が少なく、産卵数も激減しました。さらに追い打ちをかけるように卵の盗難数も多く、来年成虫の発生が見られるか危機的な状況となりました。これを受けて、群馬県及び渋川市教教育員会は緊急措置をとることにしました。

観察カードの集まりが悪く成虫の延べ頭数は把握できていませんが、成虫は4月下旬に多く観察され、産卵は55日~15日前後に集中していました。522日頃から①令幼虫、5月下旬頃①令~②令幼虫、67日頃1令~3令幼虫となり自然分散が始まりました。612日にはすべての網かけと荷札を外し、今年の調査は終了しました。*成育状況は表を参照。

〔Kポイント〕
 成虫初見日は424日、ピークは4月下旬と思われます。4月の中旬から観察者が山に入っていないので不確かですが、例年になく成虫の発生が早く、24日以前にすでに発生していたと推察されます。しかし、429日から数日気温が低い日が続いたため、ゴールデンウイーク中は期待されたほど成虫を確認することはできませんでした。その影響は産卵にもおよび、昨年165卵塊1524卵確認された卵が、今年は74卵塊702卵と激減しました。そのうち、盗難されたと思われる卵塊は14卵塊147卵でした。Kポイントでここまで産卵数が激減したことは過去にはなかったことです。産卵地域は山頂付近伐採地側に集中していましたが、比較的山全体に分散して産んでいたようでした。網掛け保護はほぼ全部に行い、若齢期の死亡率の低下を防ぎました。5月下旬に冷え込みはあったものの、5月、6月と天候に恵まれ、幼虫の成育は比較的順調で、612日には3令幼虫になっていました。自然分散が始まったので全ての卵塊の網掛けと荷札を外し、食草不足の卵塊にはウスバサイシンを移植してこのポイントの観察は終了しました。

〔Mポイント〕
 成虫初見日は420日で、例年より1週間ほど早く、産卵は55日から確認されました。産卵数は117卵塊978卵で、昨年より200卵ほど減少しました。産卵ポイントは山頂付近と尾根沿いに集中しており、アリによる捕食が目立ちました。またこのポイントも盗難と思われる卵塊が23卵塊213卵と非常に多く、盗難被害の対応も今後の課題です。約全部の卵塊に網掛け保護を行いました。1令幼虫は522日前後、2令幼虫は64日前後、611日には3令から4令になっており、自然分散が始まったので全ての卵塊の網掛けと荷札を外し、このポイントの観察は終了しました。

Yポイント〕
 このポイントは情報不足と観察者があまり行かないので、成虫の初見日は不明です。産卵は56日に発見されましたが、成虫は確認できませんでした。成虫の発生時期はもう少し早いと思われます。産卵は17卵塊130卵とこのポイントも60卵ほど減少しました。数は少ないものの、産卵ポイントは林の奥の方へ広がりました。

3ポイントの産卵合計は208卵塊1,810卵と昨年よりも1,000卵程、一昨年より5,000卵程も減少しました。特にKポイントでの減少が著しく、2015年は2014の半数、今年は2015年のさらに半数と二乗的に激減しました。メインアイランドと考えているKポイントでの減少は深刻です。その原因は環境の変化が大きいと考えます。
1)林の木々が成長し、臨床に日差しが充分に届かない。2)ウスバサイシンの減少。3)乾燥化による植生の変化。などです。さらに今年は成虫の発生が早く、山頂部のウスバサイシンの芽吹きと合わなかったことも激減の要因と思われます。

 今年も盗難が多かったので、実質山に残った卵は1,400卵程。1,000卵が絶滅のボーダーラインと言われるので、危機的状況は深刻です。緊急措置、網掛け保護、食草の移植など試みましたが、来年、成虫がどの程度発生するか懸念されます。
今後は、メインアイランドの移動やアイランドの増加、生息地の環境整備など引き続き今まで以上に注意観察と保護対策が必要です。
 

  観察カードは未集計です。成虫延べ頭数など整いましたらご報告いたします。特に成虫の初見日が把握出来ておりません。今後の考察の為にも観察カードの提出にご協力をお願いいたします。 

〈成育状況表〉

 

Yポイント

Mポイント

Kポイント

成虫初見日

不明

420

424

成虫ピーク

 

未集計

未集計

産卵初見日

56

55

53

産卵ピーク

 

513日前後

510日前後

令幼虫

 

528日前後

529日前後

2令幼虫

 

64日前後

65日前後

令幼虫

 

611日前後

612日前後

卵塊数(産卵数)

17卵塊(130卵)

117卵塊(978卵)

74卵塊(702卵)

2015年の発生・産卵状況(速報)・・・再び、たいへん厳しい状況に。盗難の影響も・・・   

 この冬は群馬県北部の山間部では降雪が多かったものの、平野部では昨年のような大雪はなく比較的穏やかな冬でした。3月は全国的に暖かく、その後4月に入り上旬は少し冷え込んだものの、中旬以降は晴れの日も多く気温も上昇しました。
 そのため季節は例年より1週間から10日程早く、4月29日の始動式の日には沢山のヒメギフチョウを観察することができました。キャンプ場周辺のオオヤマザクラは咲き終わった木もあり、遊歩道沿いのスミレなどの蜜源も咲いていました。また、Kポイント下部周辺のウスバサイシンは既に展葉していました。その後、5月、6月と晴れの日が多く、気温も安定していたため、成虫の発生、産卵、幼虫と順調に成育したようです。 成虫はゴールデンウイーク前半に多く観察され、産卵は5月10日~17日前後に集中していました。5月25日頃から①令幼虫、5月下旬頃①令~②令幼虫、6月7日頃②令~③令幼虫となり自然分散が始まりました。6月14日にはすべての網かけと荷札を外し、今年の調査は終了しました。


〔Kポイント〕
 成虫初見日は4月22日、ピークは4月下旬~ゴールデンウイーク中と思われます。前述しましたように今年は3月、4月と気温の高い日が多かったため、例年になく成虫の発生が早かった様です。成虫の確認場所は山頂付近に集中し、遊歩道下部や目白キャンプ場周辺での確認は殆どありませんでした。ゴールデンウイーク前半には交尾が確認され、5月2日には産卵が確認されました。その後も晴天に恵まれ気温の低い日も少なかった為、産卵は順調に進みました。しかし、遊歩道下部の食草は発芽が早かったものの山頂部では発芽が遅かった為、産卵期と少々ズレが生じ、今年の産卵状況は昨年の半数以下になりました。確認された卵は165卵塊1524卵ですが、殆どが1000mより上に集中しました。全卵塊の内59卵塊に網掛け保護を行い、若齢期の死亡率の低下を防ぎました。その後も5月、6月と天候に恵まれ、幼虫の成育は比較的順調で、5月31日と6月7日には食草不足の卵塊にウスバサイシンを移植しました。6月7日には③令幼虫、早い物は④令幼虫になっており、自然分散が始まったので全ての卵塊の網掛けと荷札を外し、このポイントの観察は終了しました。盗難と思われる卵塊も9卵塊程ありました。

〔Mポイント〕
 成虫の初見日は観察カードの集計不足のため情報が得られず不明です。産卵は5月2日から確認されているので、このポイントも成虫の発生は4月下旬と思われます。産卵数は132卵塊1,169卵で、昨年より260卵ほど減少しました。産卵ポイントは山頂付近と尾根沿いに集中しており、今年もアリによる捕食が目立ちました。その上、盗難と思われる卵塊が20卵塊190卵と非常に多く、36卵塊に網掛け保護を行いましたが盗難被害の対応も今後の課題です。①令幼虫は5月30日前後、②令幼虫は6月7日前後になりましたが、確認出来た幼虫は半数以下の50卵塊でした。網掛け保護は強風、雹や雨に対して効果を発揮しているようですが、アリなどに対しての効果が弱いのが弱点です。

〔Yポイント〕
 このポイントも情報不足と観察者があまり行かないので、成虫の初見日は不明です。産卵は5月3日に2卵塊ほど発見されましたが、成虫は確認できませんでした。発生時期はもう少し早いと思われます。産卵は24卵塊194卵と昨年とほぼ同数でした。一昨年に引き続き、昨年も渋川市文化財保護課による環境整備が行われ、今年も産卵に反映されたものと考えられます。

3ポイントの産卵合計は321卵塊2,887卵と昨年より4,000卵程も減少しました。特にKポイントでの減少が著しく、昨年500卵塊以上5,000卵を超えていたものが、今年は1,500卵程度に減少しました。その原因は定かではありませんが、成虫発生時期が例年よりも10日程早く、その為山頂付近の食草が発芽していなかったことが1つの要因かと思われます。昨年、遊歩道下部や目白キャンプ場周辺で成育した幼虫が成虫となり発生後にどこへ移動したのか不明です。成虫は山頂付近に集まる習性がありますが、1000mより下部のウスバサイシンが発芽していたにもかかわらず産卵が山頂に集中したのは、産卵時期によるものと思われます。また、ゴールデンウイーク前後の高温もその原因と推察されます。例年、この時期の山頂付近の気温は15℃~18℃位ですが、今年は20℃前後もありました。早春のシンボルであるヒメギフチョウにとっては高温だったのかもしれません。

今年は盗難が昨年よりも増えましたが、シーズン中の天候に恵まれたことで最悪の事態にならなかったことが幸いしました。しかし、3000卵に達していない状況は絶滅の危険性が高く、引き続き来年以降も注意観察と保護対策が必要です。

〈成育状況表〉

 

Yポイント

Mポイント

Kポイント

成虫初見日

不明

不明

422

成虫ピーク

 

未集計

未集計

産卵初見日

53

52

53

産卵ピーク

 

513日前後

510日前後

令幼虫

 

525日前後

524日前後

2令幼虫

 

67日前後

531日前後

令幼虫

 

614日前後

67日前後

卵塊数(産卵数)

24卵塊(194卵)

132卵塊(1,169卵)

165卵塊(1,524卵)

 2014年の発生・産卵状況(速報)

 今年、関東地方では2月に2度の雪が降り、特に2度目の大雪は我々に多大なる影響を及ぼしました。3月もあまり暖かくはなく、4月に入ってからも深山周辺では雪が降った模様で、4月27日には所々残雪がありました。春は遅いかと思われましたが、山の様子は1週間ほど早い様に感じられ、4月29日の始動式の日にはキャンプ場周辺のオオヤマザクラは咲き、スミレなどの蜜源も咲いていました。また、Kポイント下部・遊歩道周辺のウスバサイシンやカラマツも芽吹き始めていました。しかし、1,000mから上、山頂付近はまだ芽吹いていませんでした。その後、5月、6月と晴れの日が多く、気温も安定していたため、成虫の発生、産卵、幼虫と順調に成育したようです。
 成虫はゴールデンウイークから5月中旬頃に多く観察され、産卵は5月17日前後に集中していました。6月1日頃から①令幼虫、6月9日頃に②令~③令幼虫となり自然分散が始まりました。6月14日にはすべての網かけと荷札を外し、今年の調査は終了しました。成育が早い年でした。*成育状況は表を参照。

〔Kポイント〕
 成虫初見日は4月29日、ピークはゴールデンウイーク後半から5月15日前後と思われます。今年は雪が多く、雪の下で冬越しができたことが幸いしたようです。また雪解け後、5月上旬の気候が安定していたため、成虫が一斉に羽化したと推察され、目白キャンプ場周辺の車道でもヒメギフチョウを観察、また、5月下旬まで飛び古した成虫を確認しました。産卵は5月4日の観察会に初めて確認され、参加者が見ることができました。産卵時期は北西の強風が吹き、産卵に影響が出るかと懸念しましたが、晴れの日が多く気温が下がらなかった為、産卵は順調でした。その範囲も広がり、山頂付近だけではなく中腹より下、目白キャンプ場周辺でも確認することが出来ました。確認された卵は561卵塊5,086卵と昨年より2,000産ほど増加しました。しかし、5月下旬の雹と6月上旬の大雨で、孵化直前の卵塊や➀令幼虫が被害を受けかなり減りました。また山頂付近での食草不足は今年も続きました。

〔Mポイント〕
 成虫の初見日は4月27日でした。ピークは10日から20日前後と思われます。産卵は5月11日から確認され、155卵塊1,430卵で、昨年より約500卵ほど増加しました。このポイントは毎年アリによる捕食が多く、今年も遊歩道脇の卵塊がダメージを受けました。また、北西の強風と雹や雨の被害も大きかったです。網掛け保護は昆虫だけではなく、雹や雨に対しても効果を発しているようです。ただ、アリなどに対しては効果が弱いのが今後の課題です。

〔Yポイント〕
 成虫は5月10日に1頭確認されました。このポイントにはあまり観察者が行かないので、発生時期はもう少し早いと思われます。産卵は21卵塊199卵と昨年よりも100卵程増加しました。一昨年に渋川市文化財保護課による環境整備が一部地域で行われ、その結果MポイントとYポイント間を成虫が行き来出来るようになったことが、産卵の増加に反映されたものと考えられます。  

3ポイントの産卵合計は737卵塊6,882卵と昨年より3,000卵程増加しました。これは、成虫発生時期、産卵期ともに天候に恵まれたこと。また、間伐や下草刈りの効果により産卵箇所が広がったことにあると思います。しかし、クモやアリなどの天敵による捕食や無精卵のため孵化しなかった卵、雨や雹、強風などの影響により、孵化寸前での幼虫の死亡、弱令幼虫の死亡も目立ちました。また、シカによる食草の食害です。産卵された卵塊ごとウスバサイシンが食べられているものが、何卵塊かみつかりました。今年も網掛け保護を行いましたが、捕食率が少ないことや、強風や大雨によるダメージには依然効果は高いようです。安定的な成虫数や産卵数を維持していくのには、食草のウスバサイシンや蜜源の増殖、下草刈りなどの山の管理などが今後も必要です。
 盗難被害は、今まであったように、網掛け実施中の卵塊をウスバサイシンごと持ち去られたケースはありませんでした。しかし、尾根筋や遊歩道脇では食草ごと無くなった卵塊がいくつか確認されています。
  

 

Yポイント

Mポイント

Kポイント

成虫初見日

510

427

429

成虫ピーク

 

未集計

未集計

産卵初見日

510

510

54

産卵ピーク

518日前後

518日前後

令幼虫

530日前後

531日前後

2令幼虫

64日前後

68日前後

令幼虫

68日前後

614日前後

卵塊数(産卵数)

21卵塊(199卵)

155卵塊(1,451卵)

561卵塊(5,232卵)


  2013年の発生・産卵状況

 今年は3月中にサクラが開花し、成虫の発生も早いかと思われました。しかし、4月に入ると一変して気温の低い日が続き、4月21日には赤城山では雪が降り、キャンプ場周辺も5㎝程の積雪になりました。4月29日の始動式の日にはキャンプ場周辺のオオヤマザクラは咲き始め、スミレなどの蜜源も咲いていました。また、Kポイント下部・遊歩道周辺のウスバサイシンも芽吹いていました。山は思ったほど季節の遅れはないと感じましたが、1,000mから上、山頂付近は何も芽吹いていませんでした。その後、5月、6月と晴れの日が多く、気温も安定していたため、成虫の発生、産卵、幼虫と順調に成育したように思われます。
成虫はゴールデンウイークから中旬頃に多く観察され、産卵は5月18日前後に集中していました。6月1日頃から①令幼虫、6月9日頃に②令~③令幼虫となり自然分散が始まりました。6月15日、16日に殆どの卵塊が終了。6月23日にはすべての網かけと荷札を外し、今年の調査は終了しました。成育が早い年でした。*成育状況は表を参照。

〔Kポイント〕
 成虫初見日は4月29日、ピークはゴールデンウイーク後半から5月15日前後と思われます。4月に低温が続きましたが、その後気温が下がらなかったのと、晴れの日が多かった為、成虫が一斉に羽化したと推察されます。産卵は5月12日から確認され、その範囲も山頂付近だけではなく中腹より下まで広がりました。確認された卵は300卵塊2821卵でしたが、産卵は増加したものの山頂付近での食草不足は今年も続きました。

〔Mポイント〕
 成虫の初見日も4月29日でした。ピークは10日から20日前後と思われます。産卵は5月15日から確認され、114卵塊944卵で、昨年より約300卵ほど減少しました。このポイントは毎年アリによる捕食が多く、今年も遊歩道脇の卵塊が壊滅的なダメージを受けました。アリに対しては網掛け効果が弱いので懸念されます。

〔Yポイント〕
 ここでは成虫は確認されませんでしたが、産卵は8卵塊65卵が確認されました。このポイントは数年激減しており、原因として雑木の生い茂りやウスバサイシンの減少など環境の変化が考えられます。そこで、昨年、渋川市文化財保護課による環境整備が一部地域で行われました。このことにより、MポイントとYポイント間を成虫が行き来出来るようになりました。

3ポイントの産卵合計は422卵塊3794卵と昨年より約300卵と若干増加しましたが、依然、絶滅が危惧される状況です。生育状況は前述いたしましたが、クモやアリなどの天敵による捕食や無精卵のため孵化しなかった卵も多くみられました。前述したように、今年は比較的天気が安定していたため、孵化寸前での幼虫の死亡、雨や雹、強風などの影響による弱令幼虫の死亡は少なかったようです。今年も網掛け保護を行いましたが、捕食率が少ないことや、強風や大雨によるダメージには依然効果は高いようです。
安定的な成虫数や産卵数を維持していくのには、食草のウスバサイシンや蜜源の増殖、下草刈りなどの山の管理などが今後も必要と思われます。また、昨年は新聞ニュースに取り上げられましたが、今年も12卵塊137卵が盗難被害にあいました。ここ数年では網掛け実施中の卵塊をウスバサイシンごと持ち去られたり、盗難の痕跡が分からないように、荷札や網も持ち去られたりと、手口が悪質化しています。さらに食草のウスバサイシンも株ごと盗まれています。引き続き、盗難防止策も頭が痛い問題です。また保護連絡協議会でも報告され、今後、県や市による厳重な対処が進められることと思われます。

 

2012年の発生・産卵状況
 
今年は厳しい冬と言われ3月、4月上旬と気温の低い日が続き、10日ほど季節が遅れているように思われました。しかし4月後半には気温が上がり、429日の始動式にはキャンプ場周辺のオオヤマザクラは咲き始めました。昨年の同じ時期には見ることの出来なかった蜜源となるスミレも芽吹き、Kポイント下部・遊歩道周辺のウスバサイシンも芽吹いていました。山は思ったほど季節の遅れはなく、むしろ冬の寒さはスプリングエフェメラルたちにとっては良かったのかもしれません。しかし、5月は五月晴れが少なく、5月中旬~6月にかけても気温が上がりませんでした。また雹や強風の影響を受け卵や弱令幼虫で死亡する卵塊も目立ちました。幼虫は620日前後では2令幼虫に成り立ての卵塊から4令幼虫と成育にもバラつきが多かったようです。
 Kポイントでの成虫初見日は429日でした。ピークはゴールデンウイーク後半から515日前後と思われます。2010年、2011年と2年連続補強策の効果もあり成虫数は昨年より増加したと推察されます。産卵は510日から確認され、その範囲も山頂付近だけではなく中腹あたりまで広がりました。確認された卵は222卵塊2208卵でしたが、産卵は増加したものの食草不足となりました。
  Mポイントでの成虫の初見日は55日でした。産卵は513日から確認され、120卵塊1227卵でした。このポイントも増加しましたが生育状況はKポイントとほぼ同様でした。
 Yポイントでの成虫初見日は429日でした。産卵は2卵塊11卵が確認されました。このポイントは数年激減しており、原因として雑木の生い茂りやウスバサイシンの減少など環境の変化が考えられます。
 3ポイントの産卵合計は334卵塊3446卵と2008年の水準まで回復しましたが、依然、絶滅が危惧される状況です。生育状況は前述いたしましたが、クモやアリなどの天敵による捕食や無精卵のため孵化しなかった卵も多くみられました。また、急に気温が下がり孵化寸前で死亡した卵塊、雹や強風によりウスバサイシンが破れて卵が落ちてしまったもの、雨にたたかれ弱令幼虫で死亡したものも多くみられました。元気に育った卵や弱令幼虫は網掛け保護された卵塊に多く、強風や大雨にも網掛けの効果は大きいと再確認しました。
 安定的な成虫数や産卵数を維持していくのには、食草のウスバサイシンや蜜源の増殖、下草刈りなどの山の管理などが今後も必要と思われます。また、ご存知の通り新聞ニュースに取り上げられましたが盗難被害です。ここ数年では網掛け実施中の卵塊をウスバサイシンごと持ち去られています。今年は盗難の痕跡が分からないように、荷札や網も持ち去られました。また食草のウスバサイシンも株ごと盗まれています。盗難防止策も頭が痛い問題です。県や市による厳重な対処が求められ、また保護連絡協議会でも報告されました。
 62日頃から①令幼虫、617日頃に②令~③令幼虫となり自然分散が始まりました。624日にはすべての網かけと荷札を外し、今年の調査は終了しました。2013年の発生が気にかかります。

 2011年の発生・産卵状況
  今年は3月、4月と寒い日が続き、10日ほど季節が遅れているようでした。5月に入っても気温は低く、キャンプ場周辺のオオヤマザクラは5月に入ってから咲き始めました。ゴールデンウイーク前半の生息地はまだ冬の装いで、蜜源となるスミレは殆ど見られませんでした。春が遅かった影響は6月初旬まで見られましたが、中旬には高温が続き、山はほぼ例年通りの状況となりました。
 成虫の発生は寒さの影響を受け、Kポイントでの初見日は5月4日(観察会当日)でした。ゴールデンウイーク後半から羽化が始まり、成虫のピークは5月15日前後と思われますが、成虫数は激減しました。また、6月4日に飛び古したヒメギフチョウを確認しました。6月に入ってから成虫を確認したのは初めてのことと思われます。産卵は5月15日から確認されましたが、あまり確認されず、再び危機的状況になりました。最終的にKポイントでは86卵塊821卵、1令幼虫7頭、2令幼虫11頭が確認されただけでした。
 Mポイントでの成虫の初見日は5月8日でした。産卵は5月15日から確認されましたが、26卵塊237卵でした。
 Yポイントでは成虫は確認されませんでしたが、産卵は1卵塊1令幼虫6頭が確認されただけでした。3ポイントの合計は113卵塊1082卵(含・幼虫)と、再び絶滅が危惧される状況になってしまい、緊急措置が必要となってしまいました。
 産卵数の減少は成虫の激減によりますが、これは昨年夏の猛暑の影響による乾燥、生息地の踏み荒らしによるウスバサイシンや蜜源の減少、今年の羽化期における低温、産卵期におけるウスバサイシンの生育の遅れなどが考えられます。
 5月中旬から6月にかけては気候が比較的安定していましたが、天敵による捕食が目立ちました。すべての卵塊に網かけなどの対策も試みましたが、クモやアリなどの天敵を防ぎきれませんでした。今後、地中からの天敵対策も考えなくてはならないと感じました。また、網かけ保護をしてある卵塊の盗難(食草ウスバサイシンごと)も見られました。
 6月10日頃から1令幼虫、6月19日頃に2令~3令幼虫となり自然分散が始まりました。28日にはすべての網かけと荷札を外し、今年の調査は終了しました。2012年の発生が気にかかります。

2010年の発生・産卵状況
 今年は、3月、4月と寒い日が続き、1週間から10日ほど季節が遅れているようでした。5月に入っても状況はあまり変わらず、ゴールデンウイーク前半の生息地は、まだ冬の装いでした。キャンプ場周辺では、5月に入ってからオオヤマザクラが咲き始めました。また、生息地はイノシシによる踏み荒らしが目立ち、ウスバサイシン、カタクリなど植物は大きなダメージを受けました。
 成虫の発生は寒さの影響を受け、Kポイントでの初見日は5月3日でした。5月4日には早くも交尾が確認され、一斉に成虫が羽化し始めたようです。5月16日前後をピークに成虫の発生は減少しました。成虫数は思ったほど確認されなかったように思われます。産卵はKポイントで5月9日から確認されました。しかし、産卵はあまり確認されず、最終的にKポイントでは95卵塊886卵が確認されただけでした。
 Mポイントでの成虫の初見日は5月5日でした。卵も確認されましたが、19卵塊119卵、1令幼虫23頭でした。Yポイントでは成虫は確認されませんでいたが、産卵は5卵塊40卵が確認されたのみでした。3ポイントの合計は119卵塊1100卵と、再び絶滅が危惧される状況になってしまいました。
 産卵数の減少は成虫の激減、生息地の踏み荒らしによるウスバサイシンの減少、ウスバサイシンの生育と産卵期との相違などが考えられます。
 5月中旬から6月にかけては気候が比較的安定していましたが、天敵による捕食が目立ちました。すべての卵塊に網かけなどの対策も試みましたが、クモやアリなどの天敵を防ぎきれませんでした。今後、地中からの天敵対策も考えなくてはならないと感じました。 6月19日頃に2令~4令幼虫となり自然分散が始まりました。24日にはすべての網かけと荷札を外し、今年の調査は終了しました。2011年の発生が気に掛かります。

・Yポイント 成虫の確認できず。5卵塊、40卵。
・Mポイント 成虫初見:5月5日 
        卵塊数:19卵塊 産卵数:119卵と1令幼虫23頭
・Kポイント 成虫初見:5月3日 成虫ピーク:5月15日前後
        卵塊数:95卵塊 産卵数:886卵

2009年の発生・産卵状況
 2009年は4月の平均気温が高く低標高地域では春の到来が早いように思えた。しかし、ヒメギフチョウの発生区域のような高標高地域では気温はさほど上がらず、かえって4月下旬の低温のため春の訪れは遅かったようだ。キャンプ場周辺では4月29日の始動式にオオヤマザクラが咲き始めた。5月に入って気温は高かったが、5月14日には寒冷前線の通過があり強風注意報が発令された。16日の産卵調査の際に、こすれて葉のまわりが茶色くなったウスバサイシンが多く見受けられたことから相当強い風が吹いたものと思われる。5月26日にも沼田市で突風による被害が出ている。
 総産卵数は1721卵(一部、幼虫になってから確認)と非常に大きな減少となった。この数は2008年に確認された数の半数以下で、再び絶滅が危惧される状況であった。産卵数の減少は強風日が産卵時期と重なり、羽化し交尾したばかりの雌成虫が飛ばされてしまった影響ではないかと考えられる。
 5月下旬から6月にかけては、気候は比較的安定していた。天敵による捕食も少なく、若齢幼虫期の死亡率を例年並みに抑えることができた。絶滅の危惧を脱したとは言えないが、2010年もなんとか発生を確認できるものと期待している。   
 また、2008年に発生し心配されていた飼育した場合に出やすい斑紋を持った成虫は、2009年には確認されなかった。

・Yポイント 成虫の確認できず。1令幼虫を11頭確認(3卵塊)。
・Mポイント 成虫初見:5月2日 
        卵塊数:39卵塊 産卵数:355卵
・Kポイント 成虫初見:4月29日 成虫ピーク:5月10日前後
        卵塊数:128卵塊 産卵数:1355卵 

2008年の発生・産卵状況
 今年も春の到来が早く、前橋のサクラの開花は3月26日でした。深山のバス停のサクラも始動式である4月29日には終わっており、キャンプ場周辺のオオヤマザクラは咲き始めていました。
 今年は成虫の発生が非常に心配されましたが、Mポイント・Kポイント共に成虫の初見日は4月27日でした。残念ながらYポイントでの成虫確認の報告はされていません。Kポイントでは、その後も成虫を確認することができ、また遊歩道のかなり下の方でもヒメギフチョウを見たという報告もありました。
 産卵はKポイントで5月4日に確認がされ、産卵が始まりました。産卵期は雨の日が多かったのですが、比較的天候も安定していて、産卵数は順調に増えました。Mポイントはわずかですが、確認されました。Yポイントは産卵の確認はされませんでした。
 5月上旬は非常に気温が高かったのですが、中旬は低温の日が続き、産卵された卵が死亡しないかと心配された時期もありました。この低温のため孵化までの時間がかかり、5月下旬から6月初旬に1令幼虫となりました。しかし、その後も気温が低く、また雨の日も多かったため、網かけ保護などの対策を試みましたが、若令幼虫期にアリやクモなどによる捕食、風雨にさらされて落とされた卵塊などが多くみられ、約3,200卵あった卵が6月の2週目には半数以下の1,500卵ほどになってしまいました。
 しかし、その後は順調に生育し、6月20日前後には2令から3令幼虫となり自然分散が始まったため、6月21日にすべての網かけ保護と荷札を外し、今年の調査は終了しました。
・Yポイント 成虫の確認できず。産卵も確認されず。
・Mポイント 成虫初見:4月27日 
        卵塊数:27卵塊 産卵数:212卵
・Kポイント 成虫初見:4月27日 成虫ピーク:5月5日前後
        卵塊数:323卵塊 産卵数:3,244卵 

2007年の発生・産卵状況
 4月30日に赤城姫に出会ったとの報告が掲示板に掲載されました。例年より少し遅れ ましたが、発生状況が心配されていましたので、ホッとしました。ただし、頭数はかなり少ない状況が続きました。5月8日、南雲小の全校観察会で、産卵のようすが観察されました。
  しかし、5月20日までの産卵確認数は450卵。過去最悪だった昨年の6分の1、多い年の10分の1程度です。卵から成虫になる確率は、これまでの調査結果から2パーセントほど と推定しています。全卵に網掛けをして卵からサナギになるまでの死亡率を抑える方法をとることにしましたが、危機的な状況といわざるをえません。
 5月下旬に、こうした状況を渋川市文化財保護課および群馬県教育委員会文化課に緊急報告を行いました。その結果、県では「種の維持が困難」と判断し、卵を採取して「群馬昆虫の森」でサナギになる直前の5齢まで人工飼育し、その後、幼虫を生息域に戻す措置をとりました。県指定の動植物で、こうした措置をとるのは初めてとのことです。

渋川市・群馬県による緊急対策の新聞記事(上毛新聞・6月21日)

2006年の発生状況と2007年の見通し(機関誌「赤城姫」 19号より 概要)
○のべ成虫数 346頭
○産卵数 3163個(339卵塊) 

 2006年4月は月をとおして気温が低く、特に下旬は冷えこみ25日には雷・ひょうが観測された。5月上旬は高気圧に覆われて晴れの日が多かったものの、中旬から下旬は曇りや雨の日が多く、日照時間が少なかった。その傾向は6月にはいってからも続き、9日より梅雨に入り、月をとおして雨の日が多く、時に上旬は気温も低かった。7月に入っても天候は回復せず雨の日が多く、梅雨明けは30日で例年より10日遅かった。2002年から順調に産卵数が増加していたが、総産卵数は2005年の半分以下に減少し、2003年のレベルまで逆戻りした。その上に弱令幼虫の死亡率が高く、2007年の発生数は減少するものと思われる。

2005年の発生状況(機関誌「赤城姫 18号」より 概要)
○のべ成虫数 944頭
○産卵数 7311個(775卵塊)
 
2005年、4月上旬は気温がかなり高く、6日には前橋で26.4℃の真夏日を記録した。その後、気温は中旬からいくらか低くなったものの、下旬より再び暖かくなり、29日には前橋で31.6℃まで上昇した。5月は中旬に雨の日があり若干の冷えこみがあったものの、全体的には安定した気候であった。6月に入ってからも気温の高めの日が続き、降雨量も少なく安定していた。
 成虫の初見日は、昨年と同日4月29日で、5月に入ると、すべてのポイントにおいて多数の個体が観察されている。昨年懸念された台風の影響はあまりなかったようである。産卵は5月3日から観察され、これも昨年と同日であった。5月は雨の日が多く産卵への影響が心配されたが、結果は全てのポイントでの産卵数が増加した。幼虫の成育は、昨年ほど早くはなかったものの、順調で6月19日には多くの幼虫が3令になっていた。3カ所のポイントで総数49卵塊の網かけを行った。死亡率は昨年並みで、網かけにより若令幼虫期の死亡率を低減させることができた。 

2004年の発生状況(機関誌「赤城姫 17号」より 概要)
○のべ成虫数 304頭
○産卵数 3583個(378卵塊)
 2004
年は3月下旬より気温が高くなり、前橋の月平均気温は平年より高かった。その差は4月が1.8℃、5月が0.9℃、6月が1.8℃であり、これは2003年より4月で1.3℃、5月、6月で0.5℃高かった。5月の降雨量は多く、平年比217、また6月には2つの台風が接近した。特に、6月21日に接近した台風6号では、最大瞬間風速27.5mと6月としては1940年の観測開始以降、第1位の強い風が吹いた。
 4月20日は気温が高かったが、ヒメギフチョウは観察されなかった。しかし、成虫初見日である4月29日には多数の個体が観察されており、4月25日前後から発生していたものと思われる。産卵も5月3日から観察された。5月は雨の日が多かったにもかかわらず、2つのポイントでの産卵数は若干増加した。しかし、1カ所のポイントでは若干減少した。幼虫の生育は早く6月中旬には4令になるものも見られた。2カ所のポイントで総数75卵塊に網掛けを行つた。今年は観察が追い付かず正確な死亡率を確認することが難しかったが、例年並みの死亡率で、網掛けにより若令幼虫期における死亡率を低減させることができたと思われる。
 6月21日の台風6号では、ヒメギフチョウの生息地でも強い風が吹いた。生息地付近に埴栽されていた山桜が10本ほど根元から折れた。6月13日に幼虫の観察を終了していたため、データとしては確認できなかったが、この時期、まだ終令に近い幼虫が多数いたと考えられる。2005年の発生数に対する影響が懸念される。

2003年の発生状況(機関誌「赤城姫 16号」より 概要)
○のべ成虫数 382頭
○産卵数 3207個(325卵塊)
 2003年春は2002年のような異常な高温もなく、全般的に平年並みの気候であった。5月31日には気象観測史上で三番目に早い台風4号が愛媛県宇和島市付近に上陸したが、群馬県への影響は少なかった。しかし、夏は寒く1993年以上の冷夏となり、農作物への大きな被害が報告された。
 ヒメギフチョウの発生も平年並で4月27日には、2カ所のポイントで成虫が見られた。産卵も5月4日から観察され、全てのポイントで産卵数が増加した。2カ所のポイントで総数約100卵塊に網掛けを行ったが、昨年、産卵数の激減が認められた1カ所のポイントを重点に行い、個体数の回復を試みた。その結果、若令幼虫期における死亡率を低減させることができ、生育も平年並で6月下旬には多くの幼虫が3令、4令になった。
 今秋も地元小学校のPTAの方々により、Kポイント下部において下草の整理が行われ、今後の生息地の低標高域への拡大が期待される。 

2002年の発生状況(機関誌「赤城姫 15号」より 概要)
○のべ成虫数 215頭
○産卵数 2214個(221卵塊) 
 
2002年は3月、気温が高く、前橋では20日に桜(ソメイヨシノ)が開花した。これは平年より12日、昨年より6日早く、1953年の統計開始以降で最も早い記録であった。この傾向は4月に入ってからも続き、前橋の月間平均気温は14.5℃と1897年の観測開始以来、第4位の高温であった。5月も気温は高く、5日には前橋で30。5℃の真夏日となった。しかし、5月20日、27日には降雹があり、特に27日は日最大10分間降水量が17.0mmと1940年の統計開始以来、5月としては第一位の更新となった。6月は11日に梅雨入りし、平年並みの気温であった。
 このような早春の異常高温により、ヒメギフチョウの発生も早く4月19日には1カ所のポイントで成虫が見られた。産卵も5月2日から観察された。5月の降雹時には既に網掛けを開始しており、また、多くの卵塊がまだ孵化していなかったため、食草からたたき落とされる若齢幼虫は少なかった。幼虫の生育は順調で、6月中旬には多くが3齢になった。
 昨年、調査を再開したポイントでは、前年の下草整理の効果があり、産卵数が大幅に増加した。Mポイントにおける産卵数は例年並であったが、Yポイントでは卵数が激減した。そこで、産卵数が少なかった過去の記録を参考に幼虫数の維持を検討した。また、3カ所のポイントで総数約100卵塊に網掛けを行い、その結果、若令幼虫期における死亡率を低減させることができた。
 今秋も地元小学校のPTAの方々によりKポイントにおいて下草の整理が行われた。

2001~1988(工事中)