赤城姫との再会

 1981(昭和56)年、絶滅したと考えられていた赤城山のヒメギフチョウと再び出会ったのは、桐生市に住む民間の愛好家であ る大橋健司氏でした。
 大橋氏は、前年からウスバサイシンの調査のために鈴ヶ岳近くに出かけていましたが、この年の春に偶然、現地で桐生市の鈴木・小林氏と知り合っています。お二人は、「赤城山でヒメギフが採集された」という情報を聞き、調査に来ていたのでした。
 そして、その一週間後・・・

 (1981年)53日、昨日の疲れもあり9時頃に起床。朝食を済ませて外を見ると、薄日が射している。外に出てみると意外にも天気は好い。しかしこの時間からでは遠くには行けないと思い、赤城山の様子を見てくるかと、930分出発して深山には1時間程度で到着しました。
 沢の右側の道より林道に入る。先週、二人と出会った場所を見ながら奥へ入り、途中の分岐路を直進して暫く進むと、チェーンが張ってあって進めないので、車を降りて暫く歩く。コツバメ、ミヤマセセリ、キベリタテハ、スジグロシロチョウなどが飛んでいるが、ヒメギフの気配はなく、再び車で分岐路まで戻って右折して進み、当時はまだ無かった現在のキャンプ場を過ぎて、鈴ヶ岳の登山道方面へ向かう。先週三人で来たときは入らなかった道で、去年来た時よりも登山道は整備されていました。こちらの道はチェーンが外されていたので、車でさらに奥へと進むが、車道が終わり登山道となったので、Uターンして来た道をゆっくりと周囲の様子を見ながら戻り、現在のキャンプ場付近まで来た。その時、右側のカラマツ林の中より、小形のアゲハが飛び出した。慌てて車を止めほとんど条件反射で、ネットを取り出し追いかけて、難無くその蝶をネットインした。 
 まさかと思いながら震える指先でネットをたぐり、確認するとそれは確かにヒメギフで新鮮な♂でした。
車を路肩に寄せてその付近を中心にすこし歩き回ったが、時計を見ると既に12時を過ぎていたので、いったん山を降りる。麓の食料品店でパンを買い、ついでに公衆電話で鈴木さんに報告して、再び山に向かうが、2時頃には曇天になり、2時半頃にあきらめて山を降りる。結局その日はその1頭だけでした。
         (赤城姫の思い出  大橋健司 「赤城姫」第18号、2005年度より)

赤城姫の思い出(全文)  大橋健司